以前、他店で購入されたお客様からこのようなご相談をいただいたことがあります。

TVショッピングで買った羽毛布団が3年経ったらボリュームがなくなり、寒く感じるようになってきた。メンテナンスをして元の状態に戻すことはできないか?
残念ながら、もともと未成熟なダウンボールがつぶれてしまった場合、元に戻すことはできません。そのまま我慢して使うか、買い替えていただくしかないのです。
羽毛布団は安いと1万円台、高いものは100万円以上します。

どれも同じように見えるのにどうしてこんなに値段が違うの...?
中身が見れないことから、こんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
購入前にしっかりとした知識を身につけて・・・と言いたい所ですが、羽毛の専門家になるわけではないので、そんなに長い時間をかけて勉強することもできないですよね。
このページでは、羽毛のプロの視点から、「これだけ知っておけば失敗することはない羽毛布団選びのポイント」をギュッと凝縮してお伝えします。
読むのが早い方は5分程度の時間でこのような知識が身につきます。
- 羽毛布団の値段の違いがどこからくるのか
- 10年以上長く使える羽毛布団の特徴
- 品質表示の裏にある意味
- 量販店では教えてくれない一番大事なポイント
ここで学んだ知識をもとに、お店の販売担当者に納得するまでどんどん質問をぶつけてみてください。長く愛用できる羽毛布団選びのお役に立てれば幸いです。
そもそもなぜ羽毛布団が良いのかわからない、という方は、こちらの記事もあわせてお読みください。

目次
「ダウン」と「フェザー」の違い。
羽毛布団の中身は大きく「羽毛(ダウン)」と「羽根(フェザー)」に分かれます。
「軽くてあたたかい」というイメージを羽毛布団にお持ちの方が多いと思いますが、これは「ダウン」の特徴。
フェザーには硬い芯があり、その分ダウンよりも重くカサカサした寝心地になります。
JIS規格では、ダウンがどのくらい入っているかによって、「羽毛布団」と呼ぶか「羽根布団」と呼ぶかを明確に区別しています。
羽毛布団 | 羽根布団 |
---|---|
「ダウン」が50%以上 (フェザーが50%未満) |
「ダウン」が50%未満 (フェザーが50%以上) |
このことをお伝えすると、

これまで羽毛布団と思って使ってきたのが羽根布団だったと知ってびっくりしました。
とおっしゃる方も多いです。
フェザーの保温性はダウンと比べて大きく劣ります。良質な羽毛布団ほどダウンが多く使われるというわけです。
ところがダウンは水鳥の胸毛の部分にわずかにしか生えているだけで、1羽あたり10g程度しか取れません。フェザーと比べて手に入りづらいため、ダウンがたくさん使われている羽毛布団は値段も高くなります。

「スモールフェザー」というのは、腹部に生えている小さなフェザーのことです。羽根部分に生えているフェザーよりも芯が小さいため、カサカサ感は軽減されます。
それでもダウンの軽さや暖かさには及びません。たまに見かける「スモールフェザー100%の高級羽根布団」という表記に騙されないようにしてください。
表記上はダウン率が50%以上あれば羽毛布団と呼ぶことができますが、「天然のエアコン」ともいわれる羽毛布団の本当の良さを実感するには、ダウン率90%以上は必要です。
軽さや暖かさを求めるならダウン率90%以上の羽毛布団を選ぼう。
ダウン率についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。

「ダウンボール」の大きな羽毛布団を選ぼう。
1つ1つのダウンを「ダウンボール」と呼びます。
ダウンが暖かいのは、ダウンボールに細かく生えている小羽枝(しょううし)が空気の層をつくり、そこに熱が蓄えられるから。

ダウンボールは大きいほどたくさんの熱を蓄えることができますので、ダウン率が同じでも、ダウンボールが大きい羽毛布団の方が暖かくなります。
ダウンボールが大きく育つためには、大人の鳥になるまで成長を待たないといけません。大きく育つまでには時間も餌代などのコストもかかりますので、その分が製品価格に反映されるというわけです。

同じダウン率なのに値段が全然違うことがあるのは、ダウンの品質で暖かさに差が出るからなのね。
近年、ダウン製品の需要が世界的に高まっており、良質なダウンの仕入れ値は年々高騰しています。それにつれて羽毛布団の価格も高くなっていかないとおかしいのですが、そうはなっていません。
2016年〜2018年の間に羽毛の原料価格は約2.5倍も値上がりしました。
品質表示上は同じ「ダウン」なので、製品価格を抑えるために未成熟なダウンを使用する羽毛布団が増えています。
同じダウン率でも値段が違う理由は・・・- ダウン原料が大きく値上がりしている
- 売れなくなるので羽毛布団の価格は高くできない
- 未成熟な低品質ダウンが使われることが増えている
「安く買えるダウンの方がお得じゃない?」と喜んでばかりもいられません。
小さくて未熟なダウンは、数年でつぶれて使い物にならなくなります。
大きくて成熟したダウンボールはつぶれにくく、打ち直しをすることで新品同様のボリュームに戻すことも可能です。
ダウンはもともと100年以上持つと言われる耐久性に優れた天然素材。
ダウンボールが大きな羽毛布団は、暖かいだけでなく丈夫で長持ちです。
何度も買い替えるより、良質な羽毛布団をメンテナンスして長く使った方が、10年単位で考えるとリーズナブルなこともあります。
同じダウン率でもダウンボールの大きさで暖かさが違う。ダウンボールが大きい羽毛布団は丈夫で長く使えるのもメリット。
外から見てもわからないダウンボールの大きさは、品質表示からある程度見分けることができます。こちらの記事で詳しい方法を解説しています。

羽毛の量は多い方が良い?
商品ページに「1100g」「1.3kg」など羽毛布団の充填量が書かれているのを見たことがある人も多いと思います。あれは羽毛布団の中の羽毛(ダウン+フェザー)の重さを表したものです。
この数字は多いほど良いというイメージをお持ちかもしれません。実際、シングルサイズの羽毛布団なら1200〜1300グラムは入ってないと駄目だ、と解説されているサイトも見かけます。
この充填量のグラム数を鵜呑みにして羽毛布団を選ぶと失敗するので注意が必要です。
量が多い方が良いとは限らない- フェザーは芯がある分ダウンよりも重いので、フェザーがたくさん入っているほどグラム数は重くなる
- 未成熟で低品質なダウンを量でごまかしている場合がある
- 量を詰めすぎるとダウンがつぶれて空気の層を作りづらい
- 高品質なダウンを大量に入れると暑すぎて睡眠の質が低下する
未成熟なダウンをたくさん入れた羽毛布団は、購入当初はボリュームもあり暖かいのですが、使っているうちにダウンがつぶれてへたってきます。
こちらの写真は、同じ1グラムの重さの羽毛を比較したものです。

左から一般的な羽毛布団、和雲スタンダードモデル、和雲プレミアムモデルの羽毛です。同じ1gという重さでも嵩(かさ)が全然違うのがお分かりいただけると思います。
羽毛布団の暖かさは、ダウンボールが抱えることができる空気の量で決まります。基本的にふくらむ力が大きいダウンほど空気をたくさん含むので暖かくなります。
羽毛のふくらむ力を数値化したのがダウンパワーです。例えばダウンパワー300の羽毛とダウンパワー450の羽毛では、ボリュームが1.5倍違う計算になります。
ダウンパワー300 | ダウンパワー450 |
---|---|
羽毛の充填量1500g | 羽毛の充填量1000g |
同じ暖かさを実現しようとすると、高品質なダウンを使っている羽毛布団ほど数字に表れる羽毛の量(重さ)は少なくなります。
さらに言うと、まったく同じダウン、同じ量だとしても、生地の重さによって抱えることができる空気量は変わります。重い生地はダウンをつぶしてしまうからです。
意外に思えるかもしれませんが、羽毛のキレイさもボリュームに関係します。何年も使った羽毛布団をクリーニングに出すとふかふかに戻るのは、汚れが取れてダウンが開きやすくなるのが理由です。
羽毛布団のボリュームに関係する4つの要素- ダウンの量
- ダウンパワー
- 生地の重さ
- 羽毛のキレイさ
このように、羽毛の量は暖かさを決めるための1要素に過ぎません。
羽毛布団を選ぶときは、充填量のグラム数は参考程度にとどめましょう。
羽毛の量は多ければ良いとは限らない。ダウンの質や生地の重さによってちょうど良い量は変わってくる。
「ダック」と「グース」の違い。
羽毛布団に使われる鳥の種類は「ダック(Duck/アヒル)」と「グース(Goose/ガチョウ)」の2種類です。
一般的にはダックよりもグースのほうが高品質と説明されることが多いのですが、必ずしもそうとは言えません。ダックであっても質の高いものも存在します。
グースの方が良いとされる理由は、ダックよりもグースの方が体が大きいからです。体が大きい分、ダウンボールも大きくなり、より丈夫で暖かい羽毛布団を作ることができます。

ただし、若くて未成熟なグースよりも、長期間飼育された大人のダックの方がダウンボールは大きくなります。大事なのはダックかグースかではなく、「実際のダウンボールの大きさ」です。
親鳥になるまで飼育されたグースは「マザーグース」と呼ばれます。もともと大きなグースが長い期間をかけて成長しているため、マザーグースのダウンボールは格別に大きく、一級品です。
雑食性のダックはグースよりも臭うという意見もありますが、高い技術でしっかりと洗浄されたダックはまったく臭いません。
臭いについても重要なのはダックかグースかではなく、「清浄度」と呼ばれる羽毛の清潔さを表す数値です。
ダックかグースかよりも大事なのはダウンボールの大きさ。飼育期間の長いマザーグースは暖かさも丈夫さも一級品。
「清浄度」を必ず確認しよう。
羽毛布団は臭いがして当たり前と思っている方も多いのですが、そんなことはありません。きちんと洗浄にコストをかけている羽毛布団は臭いません。
汚れが残ったままのダウンボールは開きづらいため、いかにキレイに洗浄できるかが、衛生面だけでなく、羽毛布団の性能の良し悪しに影響するポイントなのですが、それを数値で確認できるのが「清浄度」です。

羽毛布団の清浄度とは、「羽毛がどれだけキレイに洗浄されているか」を表す、JIS規格で定められた数値のことです。洗浄度とも呼ばれます。
洗浄後の羽毛の汚れを溶かした水を透視度計に入れ、底の目印がどのくらいの深さまで見えるかを測ります。この透明度が500mmというのが、日本の業界基準です。

500mmという数字を最低基準にして、どのくらい洗浄に力を入れている羽毛布団なのかを確認することがおすすめです。例えば和雲は業界基準のさらに4倍の透明度2000mmになるまで洗浄しています。
JIS基準 | 和雲 |
---|---|
500mm以上 | 2000mm以上 |
そもそも清浄度の検査自体をしていない場合もあるので注意が必要ですが、良質な羽毛布団づくりをしているメーカーは、必ず清浄度の検査をしています。
羽毛布団を選ぶときは、ダウン率やダウンパワーだけでなく、清浄度の数値も必ず確認するようにしてください。
性能にも影響する羽毛の清潔さは、清浄度の数値で必ず確認する。
こちらの記事では「清浄度」についてもう少し詳しく解説しています。

一番大事な側生地(がわきじ)の素材と通気性。
これまで色々な羽毛布団選びのポイントをご紹介してきましたが、もし一番大事なものを一つだけ挙げろと言われたら、それは「側生地」です。

え、羽毛布団なのに羽毛よりも生地が大事ってどういうこと?
繰り返しお伝えしてきたように、ダウンは空気をたくさん抱えることでその良さを発揮します。
側生地に通気性の悪い生地を使うと、ダウンの呼吸を邪魔してしまいます。生地を通して空気の入れ替えができなくては、どれだけ良いダウンを使っていても意味がありません。
世の中のほぼ全ての羽毛布団には「ダウンプルーフ加工」という、羽毛が吹き出さないための加工がされています。
下の写真は、ダウンプルーフ加工がされている生地と、されていない生地を450倍に拡大した顕微鏡写真です。
ダウンプルーフ有りの生地 | ダウンプルーフ無しの生地 |
---|---|
![]() ポリエステル100%/打ち込み本数230本 |
![]() 超長綿100%/打ち込み本数350本 |
ダウンプルーフ加工は、樹脂をコーティングするなどして生地の目地を塞ぎます。左側のダウンプルーフがされた生地には空気が通るための隙間がまったくないことがわかると思います。
綿100%であれば、生地自体に通気性があるので少しずつ空気を取り込めますが、ポリエステルを使った生地でダウンプルーフ加工を行うと極端に通気性が悪く、蒸れます。羽毛布団の側生地は綿100%が鉄則と言われるのはそういう理由です。
綿の中でも「超長綿」と呼ばれる繊維の長い綿を使った側生地は非常に軽くて吸放湿性が高く、しかも丈夫です。
超長綿は羽毛布団に最も適した素材のため、一定以上の品質の羽毛布団には超長綿が使われます。全綿花の1.7%程度しか収穫されないため希少ですが、寝心地と丈夫さを重視するなら一番おすすめの側生地です。

通気性だけでなく、生地の軽さも同じぐらい重要です。生地が軽いとダウンのふくらみを邪魔しないため、同じダウン率、同じダウンパワーの羽毛布団でも、よりたくさんの空気を含むことができます。
生地の軽さは「●●g/㎡」のように表しますが、商品ページにはまず載っていません。量販店の販売担当者に聞いてもそこまでの知識はないことが多いです。そういう場合は「番手」の数字を確認しましょう。
同じ綿100%でも、「番手」と呼ばれる糸の太さを表す数字が大きいほど生地が軽くなり、肌触りも柔らかになります。

一般的な羽毛布団では40~60番手の生地が使われます。側生地にもこだわっている羽毛布団なら80番手、最高級品なら100番手クラスの生地が使われます。
目安としては、番手の記載がなく単に「綿100%」とだけ書いてある場合は、60番手未満である可能性が高いです。生地の軽さを重視するなら超長綿の80番手以上がおすすめです。
羽毛布団の寿命は、ダウンがつぶれるよりも、側生地が破れて中の羽毛が出てきてしまうのが原因になるケースが多いです。
「打ち込み本数」が多いほど細い糸を使って密度高く織られているため、しなやかで体にフィットする丈夫な側生地になります。
打ち込み本数とは「1インチ四方に織り込まれている縦糸と横糸の合計数」のことです。
もう一度上の顕微鏡写真 ↑を見てみてください。同じ450倍の倍率とは思えないほど糸の細さが違うと思います。(左側の生地は40番手相当、右側の生地は和雲の超長綿100番手)
- 細くて(番手)
- 長い糸(超長綿)を
- 高密度(打ち込み本数)に織る
この3つが軽くてしなやか、しかも丈夫な側生地を見分けるためのポイントです。
ひと昔前は羽毛布団の側生地といえば綿でしたが、近年の羽毛価格の高騰を受けて、側生地を綿100%からポリエステル混にダウングレードするメーカーが増えています。
「蒸れにくい」ことが利点のはずの羽毛布団で、側生地の素材のせいで「羽毛布団は蒸れる」という誤解が拡がりつつあるのはとても残念です。
側生地まで見て購入する消費者はほとんどいませんので、側生地は真っ先にコスト削減の対象になります。せっかく良いダウンを買うなら、側生地の質にもこだわりましょう。
側生地は綿100%が鉄則。できれば超長綿で番手の数字が80以上を選ぶ。打ち込み本数が多いと丈夫で長持ち。
ゴールドラベルの羽毛布団は信用できる?
ゴールドラベルとは、羽毛布団の業界団体である日本羽毛製品協同組合が審査・発行している品質推奨ラベルです。
メーカーから独立した公的な認定試験機関で品質審査をするため信頼度は高いのですが、「ゴールドラベル=高品質」というわけではありません。
ゴールドラベルには4つのランクがあり、専門店の立場からおすすめできるのは「ロイヤルゴールドラベル」「プレミアムゴールドラベル」の2つです。
ニュー ゴールドラベル |
エクセル ゴールドラベル |
ロイヤル ゴールドラベル |
プレミアム ゴールドラベル |
---|---|---|---|
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
ダウンパワー 300dp以上 |
ダウンパワー 350dp以上 |
ダウンパワー 400dp以上 |
ダウンパワー 440dp以上 |
ダウン混率 50%以上 |
ダウン混率 80%以上 |
ダウン混率 90%以上 |
ダウン混率 93%以上 |
安さ重視 | 最低ライン | 睡眠の質重視 | 最高級の品質 |
また、ラベル毎に決められた最低基準をクリアしているかだけでランク付けがされていますので、「同じラベル=同じ品質」ではないことにも注意が必要です。
ゴールドラベルは第三者機関できちんと検査がされているという安心感と、品質の目安としてご利用ください。
ゴールドラベルが付いているから高品質とは限らない。目安はロイヤルゴールドラベル以上。
まとめ。
最後に、長く愛用できる羽毛布団選びのポイントをまとめます。
- 軽さや暖かさを求めるならダウン率90%以上の羽毛布団を選ぶ。
- 同じダウン率でもダウンボールの大きさで暖かさと丈夫さが違う。
- ベストな羽毛の量はダウンの質と生地の軽さによって変わる。
- ダックかグースかよりも大事なのは飼育期間の長さ。マザーグースは暖かさも丈夫さも一級品。
- 性能にも影響する羽毛の清潔さは、清浄度の数値で必ず確認する。
- 側生地は綿100%が鉄則。できれば超長綿の80番手以上を選ぶ。打ち込み本数が多いと丈夫で長持ち。
- ゴールドラベル=高品質ではない。目安はロイヤルゴールドラベル以上。
和雲では、寒暖差の厳しい環境で育った大きなダウンボールと、ダウンプルーフ加工を行わない独自開発のDown-Breathe®生地を使った羽毛布団づくりを行っております。
高品質で長く使える羽毛布団をお探しであれば和雲の純日本製羽毛布団も是非ご検討ください。